「来年、定年になります。」ということで来られた方のお話をします。
その方は、女性で、皆さんがご存じの会社の部長をしておられました。大きな会社ですので再雇用制度があり、65歳まで働けるのではないですか、と申し上げました。
「私には夢があるんです。」
「定年になったら、シンガポールで日本語講師をしたいと思っています。」
この方は、仕事で英語を使われていて、語学力は問題ないということでした。それから、何回か相談に来られ、定年になられました。定年と同時に、退職され、計画していた日本語教師養成講座420時間を受け、現在は国内で日本語教師をしています。コロナが蔓延する中で海外にて仕事をすることは困難になっていますので、時期を待って海外で、夢を実現されると思っています。
定年を迎えてから相談に来られる方と、定年前に相談に来られる方がいます。私の経験からいえば、定年を迎えて来られる方が圧倒的に多いというのが実情です。多いパターンは次のパターンです。
「雇用保険をしっかり受給して、その後、就活をする」
背景としては、「これまで十分に働いてきました。しばらく休ませてください。雇用保険を受給してから、探します。」ということだと思います。このことが悪いと言っているのではありません。私は、人それぞれであり、その人に合った働き方をすればいいと思っています。
しかしながら、このパターンの方は、出遅れタイプだと思っています。人間の体は、蒸気機関車に似ているというのが私の持論です。動き出すときは、すぐに動き出せずにゆっくりゆっくり動き出します。止まるときも、急停車ではなくゆっくりとスピードを落としながら止まります。そうだとすれば、定年で一旦、しっかり止まってしまえば動き出すときには、すぐには動けず、時間がかかっていまいます。すぐに動こうとしてもすぐに動き出せません。
それで、お勧めしたいのは、止まる前に、止まった後のことを考えて止まるということです。定年を迎えられる前に、定年後のことを想定して、ある程度の準備をして定年を迎えるということです。
定年を迎えてからの仕事は、狭い範囲でしか選べないのが実情です、資格や特別のスキルをお持ちの方は別ですが、そうでない限りは定番のようなお仕事から選択するかたちになります。
「これといった仕事がない。」 コロナ感染者が増加している環境で、定年退職者の方へ、「何か動きがありませんか?」とお聞きした時の答えです。在職中のように責任のある仕事をしたいのではなく、少しは人の役に立つ仕事、少しでいいからやりがいのある仕事探しをされているので、なんでもいいから仕事をするということではないということだと思います。そうは言っても、具体的な仕事のイメージがある訳でもないようです。
定年を迎える前に、定年後を想定して、準備をしておかれたらよいのではないでしょうか?
定年は1年後なのですが、どういうところか見に来ました、といって相談に来られる方がいます。来られた方はラッキーだと思います。これから1年、準備ができるのですから。
米国のミネソタ大学の名誉教授であるL・サニー・ハンセン氏は、ライフプランを考える際に4つのLの調和とバランスを考えて捉えるということを提唱しています。
愛・つながり(Love) 余暇(Leisure) 学習(Leaning) 労働(Labor)の4つです。
定年を迎えられる方は、主として労働に目が行きますが、この4つのことの調和とバランスを考えて、これからのライフプランを考えることを勧めています。
これに加えて、マネープランも大事なことです。定年まで準備期間がある方は、この4つ+マネープランの5つについて考えることができます。
「定年前に埼玉しごとセンターに行こう!」
令和3年4月1日から、埼玉しごとセンターに名称が変わりました。
夢ものがたりですが、埼玉県在住、埼玉県で在職している方へ、定年になる前に、「埼玉しごとセンター」へ定年後の相談に行くということ勧められたらいかがでしょうか?50歳~定年を迎えられる方は、お時間がある時に、埼玉しごとセンターを訪問するということを会社で推奨されますと、定年になって慌てずに対処できるのではないでしょうか?
定年になって相談に来られる方は、これから仕事探しをどうしたらよいか、これまでなにも準備をされてない方が多いと思います。人それぞれですので、こうしなければいけないということはありません。押し付けるつもりもありませんが、定年を迎えられる前に、埼玉しごとセンターを利用されると定年後に少しゆとりを持って過ごすことができるのではないでしょうか。相談コーナーのご利用をおまちしています。
ミドル・シニアコーナーキャリアコンサルタント
安永直美
最終更新日:2021年09月28日